隠れ貧血って何!?~鉄剤と鉄分サプリメントの違い・選び方について~②

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隠れ貧血って何!?~鉄剤と鉄分サプリメントの違い・選び方について~①

医療用の鉄剤と一般用医薬品の鉄剤、鉄分サプリメントの違いは何?

ヘム鉄と非ヘム鉄

医療用の鉄剤と一般用医薬品の鉄剤、鉄分サプリメントの話をする前に、ヘム鉄と非ヘム鉄の話をしておきましょう。

「鉄剤」に含有する鉄にはヘム鉄」と「ヘム鉄があることをご存知でしょうか?
この2つの鉄の大きな違いは、吸収率』と『消化管への影響の2点です。

吸収率ヘム鉄の方がヘム鉄に比べて吸収性に優れている。非ヘム鉄より吸収率が5~6倍高い
非ヘム鉄は腸管から吸収される際に食物繊維やタンニンなどからの吸収阻害を受けやすいのですが、ヘム鉄は鉄イオンがポルフィリン環に囲まれているため食物繊維やタンニンなどからの吸収阻害も受けにくいとされています。
ちなみに非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂取すると吸収率がUPするためにビタミンC製剤と一緒に処方されることがあります。(クエン酸第一鉄は特にビタミンCとの併用は必要ないと言われている)

消化管への影響ヘム鉄の方がヘム鉄よりも胃腸障害を起こしにくい
非ヘム鉄は細胞内に取り込まれる際に3価から2価への鉄となりますが、この2価のむき出しの鉄が「むかつき」の原因となります。一方、ヘム鉄は鉄イオンがポルフィリン環に囲まれているため胃壁や腸管を荒らしにくいのです。

また、食品に含まれる鉄には肉や魚などの動物性食品に多く含まれるヘム鉄野菜や穀類などに含まれるヘム鉄があります

上記で説明したようにヘム鉄の方が非へム鉄より鉄としての吸収率が高いことが知られていますが、一般に日本人が食事から摂取する鉄の85%以上が吸収率の低い非ヘム鉄なのが現状です。
鉄不足を効果的に予防するためには、吸収性の高いヘム鉄が豊富な食品を含むバランスのよい食事を摂ることをおすすめします。非ヘム鉄の食品を摂取する際は吸収がよくなるようにビタミンCを含む食品と一緒に摂るなど工夫してみましょう

出典:ILS株式会社



医療用医薬品の鉄剤とは

それではヘム鉄と非ヘム鉄の違いがわかった所で医療用医薬品の鉄剤について説明しましょう。

貧血と診断されれば医療用医薬品の鉄剤が処方されることとなります。外来で飲み薬が処方されるのは下記の3つの薬剤になります。(インクレミンシロップというシロップ剤もありますが、小児向けなので成人では処方されることはないと考え載せていません)
※1日あたりの値段は比較のため仮に鉄100㎎投与としています

フェロミア錠50㎎(成分名:クエン酸第一鉄ナトリウム)⇒用法用量:1日100~200㎎(2~4錠)を1~2回に分けて食後経口投与 ※顆粒8.3%もあります
薬価:8.4円/錠(ジェネリックだとメーカーによるが5.7円/錠くらい)⇒1日16.8円(ジェネリックだと11.4円)/鉄100㎎

フェルムカプセル100㎎(成分名:フマル酸第一鉄徐放カプセル)⇒用法用量:1日1回100㎎(1カプセル)を経口投与
薬価:8.2円/錠(ジェネリックなし)⇒1日8.2円/鉄100㎎

フェロ・グラデュメット錠105㎎(成分名:乾燥硫酸鉄徐放錠)⇒用法用量:1日105~210㎎(1~2錠)を1~2回に分けて空腹時に、または副作用が強い場合は食事直後に経口投与
薬価:8.1円/錠(ジェネリックなし)⇒1日約7.7円/鉄100㎎

以上3つの医療用鉄剤ですが、どれも『ヘム鉄』といわれるものになります。
そう、医療用鉄剤は残念なことに吸収が悪く胃腸障害が出る事があるのです。どうしても胃が痛くて飲めない、、と言う患者さんは注射を受ける方もいらっしゃいます。
鉄分の量は医療用という事もあり、高用量です。
健康保険を使える医療用鉄剤は一般用医薬品や鉄分サプリメントに比べるとお値段は安く手に入りますが、普通の病院では検診で異常値がない場合フェリチン値など更に詳しい検査をして貧血と診断がおりなければ、処方して頂けない場合がほとんどです。
詳細に検査してもらいたい場合は『分子栄養療法』『オーソモレキュラー療法』等を行っているクリニックなどで相談してみましょう。

一般用医薬品の鉄剤とは

次に一般用医薬品の鉄剤はどうでしょう。

一般用医薬品で鉄剤は第二類医薬品に分類されます。
医薬品であるので『効能・効果』の部分に『貧血』と記載されています。
サプリメントよりも品質、有効性、安全性などに信頼性はあります
では鉄の種類や量、値段はどうでしょう。

よく目にする4メーカーのを比較してみます。
(※ヘム鉄の方が非ヘム鉄より5倍吸収率がよいと仮定し、治療に要する非ヘム鉄の鉄100㎎/日に相当するヘム鉄として鉄20㎎/日で値段を比較)

小林製薬 ファイチ(鉄10㎎/2錠)⇒用法用量:1日1回大人:15歳以上:2錠、(8歳以上15歳未満:1錠)
希望小売価格:30錠900円(税抜)、60錠1500円(税抜)、120錠2700円(税抜)⇒30錠だと30円/錠
非ヘム鉄100㎎換算で1日600円(※120錠入りだと1日450円なので継続するなら120錠入りがお得)
用法用量通り服用で1日60円(※120錠入りだと1日45円なので継続するなら120錠入りがお得)
※溶性ピロリン酸第二鉄のためヘム鉄。ヘム鉄より吸収は劣る。腸で溶けるフィルムコーティング錠で胃を荒らしにくく、鉄の味・臭いがしない特徴がある。
※赤血球の形成を助ける葉酸:2000μg、ビタミンB12:50µgも配合。

 

出典:小林製薬株式会社

佐藤製薬 エミネトン(鉄30㎎/錠)⇒用法用量:大人(15才以上)1回2〜3錠、7〜14才1回1錠、1日2回食後に服用
価格:80錠1748円、200錠3787円(税抜)⇒ 80錠入で21.85円/錠、200錠入で約18.9円/錠
非ヘム鉄100㎎換算で1日約72.8円(200錠入だと1日約63円なので継続するなら200錠入がお得)
用法用量通り服用で1日43.7~65.55円(※200錠入りだと1日約37.8~56.7円なので継続するなら200錠入りがお得)
※フマル酸第一鉄のためヘム鉄。ヘム鉄より吸収は劣るが、1錠当たりの鉄含有量は30㎎(厳密には29.61㎎)と他と比べて高用量。用法用量も1回3錠で1日90㎎となり治療量に近い。
鉄分の吸収を高めるビタミンC:60㎎、赤血球の形成を助ける葉酸:1000μg、ビタミンB6:3㎎、ビタミンB12:10µgも配合。

 

出典:佐藤製薬株式会社

全薬工業 ヘマニック(鉄10㎎/2錠)⇒用法用量:大人(15才以上)は1回2錠、8才以上15才未満は1回1錠 1日1回食後に服用
希望小売価格:90錠2500円、180錠4500円(税抜)⇒90錠入で約27.8円/錠、180錠入で25円/錠⇒非ヘム鉄100㎎換算で1日約556円(180錠入だと1日約500円で少しだけお得)
用法用量通り服用で1日55.6円(※180錠入りだと1日50円で少しだけお得)
※溶性ピロリン酸第二鉄のためヘム鉄。ヘム鉄より吸収は劣る。胃では溶けずに腸で初めて溶けるように被膜を施した腸溶性糖衣錠で、胃に負担がかからないように配慮の点はファイチと同じ
※赤血球の形成を助ける葉酸:2000μg、ビタミンB12:50µgも配合、これもファイチと同じ量。

 

出典:全薬工業株式会社

マスチゲン(鉄10mg/錠)⇒用法用量:成人(15歳以上)1日1回1錠、食後に服用。(8歳以上15歳未満は別に鉄5㎎/錠の製剤が販売されている。)
希望小売価格:30錠入1400円、60錠入2600円(税抜)⇒30錠入で約46.7円/錠、60錠入で約43.3円/錠⇒非ヘム鉄100㎎換算で1日約467円(60錠入だと1日約433円で少しお得)
用法用量通り服用で1日約46.7円(※60錠入りだと1日約43.3円で少しお得)
※溶性ピロリン酸第二鉄のためヘム鉄。ヘム鉄より吸収は劣る。
鉄分の吸収を高めるビタミンC:50㎎、赤血球の形成を助ける葉酸:1000μg、赤血球を守るビタミンE:10㎎、ビタミンB12:50µgも配合。
錠剤を小型化し、飲み方を1日1錠に改良してあり続けて飲みやすい。

     出典:日本臓器製薬

以上より、上記で紹介した一般用医薬品の鉄剤は全て『ヘム鉄』という事がわかりました。
製品によって鉄含有量が異なり、胃への負担が考慮されたものもありました。また、配合されている葉酸やビタミンの種類、量も異なっているようです。

上記で紹介した一般用医薬品の鉄剤でオススメは・・・

佐藤製薬 エミネトン
胃に問題がなく、効果重視の方にオススメ1錠当たりの鉄含有量が多い!1日3錠で鉄90㎎摂取可能!

 

出典:佐藤製薬株式会社

胃が弱いため、胃への負担が少ない方がよいという方はこちら

ファイチ

 

出典:小林製薬株式会社

ヘマニック

 

出典:全薬工業株式会社

ファイチもヘマニックも胃では溶けずに腸で溶ける錠剤なので胃を荒らしにくい。鉄含有量は2つとも10㎎/2錠。葉酸、ビタミンB12含有量も同じ。何錠入りを買うかにもよるが値段もそこまで変わらない。

鉄分サプリメントとは

次に市販の鉄分サプリメントはどうでしょう。
よく目にする4メーカーのを比較してみます。
(※ヘム鉄の方が非ヘム鉄より5倍吸収率がよいと仮定し、治療に要する非ヘム鉄100㎎/日に相当するヘム鉄は20㎎/日として値段を比較)

アサヒのサプリ ディアナチュラ ヘム鉄(鉄3㎎/錠)30粒入り⇒用法用量:1日1粒
希望小売価格 780円(税抜)⇒26円/錠⇒ヘム鉄20㎎換算で1日約173円
用法用量通り服用で1日26円
※赤血球の形成を助ける葉酸:200μg、ビタミンB12:2.0µgも配合


出典:アサヒグループ食品

DHC ヘム鉄(鉄10㎎/2Cap)60粒入り⇒用法用量:1日2粒
通常価格:580円(税抜) 約9.66円/Cap⇒ヘム鉄20㎎換算で1日約38.6円
用法用量通り服用で1日約19.32円
※赤血球の形成を助ける葉酸:75μg、ビタミンB12:1.0μgも配合

 

出典:株式会社DHC

FANCL 鉄&葉酸(鉄10㎎/2錠)60粒入り⇒用法用量:1日2粒
通常価格:900円(税抜) 15円/錠⇒非ヘム鉄100㎎換算で1日300円
用法用量通り服用で1日30円
※クエン酸鉄ナトリウムを使用のためヘム鉄。ヘム鉄より吸収は劣る。
赤血球の形成を助ける葉酸:200μg、ビタミンB12:2.4μg、銅:0.8mgも配合

出典:ファンケルオンライン

小林製薬 ヘム鉄(鉄6.5㎎/3錠)90粒入り⇒用法用量:1日3粒目安
希望小売価格:1500円(税抜) 約16.7円/錠⇒ヘム鉄20㎎換算で1日約154円
用法用量通り服用で1日約50.1円
※赤血球の形成を助ける葉酸:200μg、ビタミンB12:2μg、銅:4.3mgも配合

出典:小林製薬

以上より、鉄分サプリメントには『ヘム鉄』と『ヘム鉄』の物があることがわかりました。
製品によって鉄含有量が異なり、配合されている葉酸やビタミンの種類、量も異なっているようです。
サプリメントを選ぶ際は、製造環境や品質管理などをしっかりしていると公表している会社がいいかなと思います(GMP基準に基づいているか、など)。ホームページを確認してみましょう。

鉄をサプリメントで摂取する場合は、吸収率の高いヘム鉄の物を選ぶとよい。
買う前に製造環境品質管理などをメーカーのホームページでチェック

上記で紹介した鉄分サプリメントでオススメは・・・

DHC ヘム鉄(鉄10㎎/2Cap)60粒入り
吸収のよいヘム鉄が成分で、値段も安い!!

 

出典:株式会社DHC

カプセルが苦手な人はこちら

アサヒのサプリ ディアナチュラ ヘム鉄(鉄3㎎/錠)30粒入り


出典:アサヒグループ食品

小林製薬 ヘム鉄(鉄6.5㎎/3錠)90粒入り

出典:小林製薬

両方とも吸収のよいヘム鉄が成分錠剤で飲みやすいです。ただ、1錠当たりの鉄の量は少なめです。1回1錠がいい方はディアナチュラ、1回3錠でも鉄の量が多い方は小林製薬、という感じでしょうか。

次は、鉄剤、鉄分サプリメント服用の際の注意点などについて説明していきます。
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